「相続とペット」の問題

85歳のAさんには不安がありました。
それは、一緒に暮らしてきた柴犬の「ココちゃん」(3歳)のことです。
一日一回散歩したり、おもちゃで遊んだり…子犬の時から可愛がってきた、何よりの家族です。
「子どもも独立して遠方にいるし…もし私に何かあったら、この子はどうなるんだろう?」
ペットは、私たちにたくさんの癒しと愛情を与えてくれます。
だからこそ、自分の死後に残されたペットの行く末が心配になるのは、当然のことです。
このようなお悩みは、近年とても増えています。
ここでは、相続とペットのためにできる対策について、解説します。
飼い主が亡くなった後、ペットはどうなる?
ペットは法律上どういう扱いになるのでしょうか?
日本の法律ではペットは「家族」ではなく、「財産(物)」として扱われるとことになっています。
「うちの犬、家族の誰よりも私の言うことを聞くし、新聞もとってきてくれるんですよ」
という方には納得できないかもしれませんが、法律上そうなってしまっていますので、これは仕方ありません。
そのため、特に手続きをしなければ、ペットは他の財産(預貯金や家など)と同じように、相続人が引き継ぐ対象になります。
つまり、遺産分割協議(財産分けの話し合い)の場でのテーマになり得ます。
ペットのその後、よくある3つのケース
- 同居していた家族がそのまま引き取る
→最もスムーズですが、同居人が高齢や病気などで難しいことも。 - 相続人が話し合って、誰かが引き取る
→「遺産分割協議書(相続人全員で取り決めた内容を書面にしたもの)」で調整することになります。 - 引き取り手が見つからず、保健所や動物保護施設に
→相続人がいない、いても何らかの事情(家が狭い、アレルギーなど)で飼えない場合、こうなる可能性もあります。飼い主としては大変残念かもしれませんが…。
ペットの世話を見てくれる人をあらかじめ決めたり、対策を立てておかないと、最悪の場合、保護犬・保護猫として引き取られるリスクもあります。飼い主として最も避けたい結果です。
ペットのために、相続前にできる3つの備え
ペットの将来を守るには、「元気なうちに」、「法的に有効な手続き」をしておくことが重要です。
以下の3つの方法は、ペットの安心につながる具体的な対策です。
1. 負担付遺贈(ふたんつきいぞう)
ペットを託したい人に、「ペットの世話を条件に、財産を遺贈する」方法です。
これは、あらかじめ遺言書に記載しておきます。例えば、下記のように書きます。
「相続人田中太郎に現金300万円を遺贈する。(又は相続させる。)ただし、田中太郎は、遺言者のペット「ココ」(柴犬)を介護扶養し、死亡の場合は、相当な方法で埋葬、供養しなければならない。」
メリット
- 遺言書だけで成立できるため、準備が比較的簡単
→公正証書遺言や自筆証書遺言で記載するだけでOK。
生前に相手と契約を交わす必要がなく、手軽に準備を始められる。 - ペットの世話を条件に財産を渡すことで、引き受け手にインセンティブを与えられる
→「お世話をしてくれるなら財産を譲る」という条件により、お世話をしてもらいやすくなる。
金銭的な負担を軽減しつつ、責任感も持たせられる。 - 相続人以外の第三者にも依頼可能
→知人や友人も指定できる。家族より大切にお世話してくれそうな人など、柔軟に選べる。
デメリット
- 相手が拒否する可能性がある
→遺贈は本人の死後に効力発生するが、受け取る側(受遺者)は「拒否する自由」がある。
引き取り先と事前に合意・確認しておくことが不可欠。 - お世話がきちんと実行されているかを確認する手段がない
→遺言執行者がついていても、実際のペットのケア状況を継続的に見守ることは難しい。
「形式上だけ引き取る」ような事態もゼロではない。(人間の場合もあり得ますが) - 世話が長期に及ぶ場合、金額の決め方が難しい
→小型犬や猫では15年以上の寿命も珍しくなく、用意した金額が足りるか不透明。
ペットが高齢になると、医療費やケア費用がかさむ可能性も。
2. 負担付死因贈与契約
生前に契約書を交わす方法です。
「私が亡くなったらこのペットを引き取り、かわりにこの財産を譲ります」と双方で合意しておく形です。遺言書よりも確実性が高いと言われます。
ただし、相手の承諾が必要であるため、事前の話し合いが不可欠です。
メリット
- 生前に相手の同意を得て契約できるため、確実性が高い
→遺言よりも受け取り拒否のリスクが低い。将来に向けた話し合いができるので、ペットの好みや生活スタイルも共有しやすい。 - 法的に有効な契約書を交わすことで、意思がより明確に残せる
→契約書に「ペットの世話を条件に財産を渡す」と明記できる。紛争予防につながり、法的トラブルを回避しやすい。 - 契約内容に応じた柔軟な設計が可能
金銭や不動産など「渡す財産の種類」も調整できる。例えば「月3万円をペットの世話代として毎月支払う」といった分割給付の設計も可能。
デメリット
- 書面を残しておかないと、証明困難
→契約は口頭でも法的には成立しますが、トラブルを避けるにも契約書が必須。
公正証書で作成するとより確実だが、費用と手間はかかる。 - 贈与税の課税リスク
→死後に財産を渡す契約ですが、条件や時期によっては贈与税の対象となる可能性も。
相続税との扱いの違いを理解し、税理士等との連携が必要なケースもある。 - お世話の実行状況をチェックする仕組みがない
→契約があっても、実際にペットがどのように扱われているかまでは把握できない。
3. ペット信託(しんたく)
信託とは、「財産の管理・運用を信頼できる人に任せる仕組み」です。
「信頼できる第三者(信託管理人)」が、あなたの代わりにペットの世話に必要なお金を管理し、世話をする人に適切に支払うよう設計できます。
費用はかかりますが、複数の人の協力体制を組める点では最も安心です。
メリット
- ペットのためのお金の使い道をきちんと管理・監督できる
→用意した財産を、信頼できる「受託者」が管理し、ペットの世話をする人に必要な費用を支払うしくみ。お金の流れが契約で明確になるため、使い込みや不正を防ぎやすい。 - ペットの生活環境を細かく指定できる
→餌の種類や散歩の回数、トリミングサロンやかかりつけの獣医の指定なども契約時に指定可能。 - 生前から支援が始められる(認知症などへの備えにも有効)
飼い主の「長期入院や認知症発症」の時にも、信託契約があればお世話の体制と費用の管理がスムーズに機能。相続開始前から支援ができる。
デメリット
- 3つの中では、手続きや契約内容が複雑で、費用も高い
→本人が作成するのは難解で危険。信託契約書の作成には専門家への依頼が必要。契約書作成、信託財産の設定、管理報酬など、最初だけでなく継続的なコストもかかる。 - 信頼できる受託者・飼育者・監督人の選定が不可欠
→誰にお金を管理してもらうか、誰にペットの面倒を見てもらうか、人選に失敗すると逆にトラブルになる。相手の負担や責任も大きいため、安易な依頼は危険。 - ペットの寿命や医療費によって、信託財産が不足することも
→高齢のペットや病気持ちのペットの場合、想定以上の費用がかかるリスクがある。信託に入れる金額の見積もりは慎重にシミュレーションする必要あり。
行政書士に相談するメリット
ペットの将来の生活のためのこれらの制度ですが、それぞれ長所短所があります。
どれを選べばいいかわからない、という不安はやっぱり出てくると思います。
もし気になることがあれば、行政書士等の専門家へご相談ください。
こうしたペットのための法的準備を「あなたに合った形」で設計し、下記のサポートをいたします。
- 遺言書の作成支援
- 死因贈与契約書の作成
- ペット信託の設計と、司法書士・弁護士との連携
相談者皆さまの、個々のご状況に合わせて、「やさしく・わかりやすく」サポートいたします。
まとめ:今できる準備が、ペットの未来を守ります
ペットは、言葉を話せません。
だからこそ、あなたがいなくなったあとも、変わらぬ安心を与えてあげる準備が必要です。
「私がいなくなった後、うちの子はどうなるのか気になっていた」
そんな気持ちが出発点です。
遺言書、信託、贈与契約――難しく聞こえても、きちんと整えておけば、必ず役に立ちます。
専門家がしっかりサポートします。
大切な家族の一員のために、今できることを一緒に考えてみませんか?
「相談したいけど、ちょっと不安…」という方も、ちょっと聞いてみるだけでも構いません。
ご相談は初回無料ですので、お気軽にお電話やメールでご相談ください。
