よくある「遺言書の誤解」10選
よくある「遺言書の誤解」10選について、今回は④を解説していきます。
- 法定相続分があるから揉めない
- 財産が少ないから遺言書は必要ない(遺言はお金持ち用だ)
- うちは仲がいいからもめないし、口頭で大丈夫だ
- 手紙のようなものでも遺言として通用する
- 遺言なんて作ったら家族の見る目が変わって仲が悪くならないか
- 財産を自由に使えなくなるんじゃないか
- 遺言書を作るのは、年を取ってからでいい、死ぬ間際でいい
- 財産を使い切ってから死ぬから遺言書なんていらない
- 主婦だったし遺言書なんて必要ない
- 専門家に頼むのは高そうで敷居が高い、財産の内容も知られたくない
チェックリストを見ていただいて、もし当てはまるものがあったら…
それは、誤解なんです。
「遺言書」には形式があります
遺言書といえば、まず思い浮かぶのは、自分の手で書く「自筆証書遺言」ではないでしょうか。
用意するのは紙とペンだけでも構いませんし、手軽に、思い立った時に書けるのは、メリットです。
しかし、例えば下記のようなメモみたいなものでは、遺言書としてOKでしょうか?
残念ですが、遺言書の効力がないんです。
遺言 実家は長男の太郎に任せる。 俺の預金は次男の次郎に任せる。 万事くれぐれも頼む。 令和七年七月大安吉日 田中一郎 印
遺言といっても、「相続させる財産のことを書けばいいか」という感じで書いてしまうと、こんな感じの遺言書になってしまうかもしれません。
そもそも遺言書なんて人生で何回も書きませんし、普段見たりすることもありませんから、仕方ないといえば仕方ない部分もあります。
ただ、これでは遺言書としての効果が出ないのです。法的に使えないものになります。
それどころか、相続人がもめてしまう可能性も出てくるので、逆効果になることさえあります。
「手紙のようなものでも遺言として通用する」と思って、安易に書いてはいけません。
ダメなポイント
簡単にダメなポイントを挙げると、下記の通りでしょうか。
簡単に解説もしていきます。
- 「任せた」とは、「相続させる」なのか、「相続関係の手続きを任せる」なのか?
- 「俺の預金」とは、どの口座のこと?一郎さん名義の全部?
- 「大安吉日」だと、何日なのか特定できない。(大安は六日に一回)
- 「万事くれぐれも頼む」とは?
①「任せる」は遺言では使うな
「任せる」は、普段の話し言葉や書き言葉では、よく使う表現ではあります。
しかし、遺言書でこの言葉を使うのは絶対にやめておきましょう。
というのも、「遺産をあげる」という意味なのか、
それとも「遺産分割の手続きを任せる」という意味なのか、
「あげるから手続きも全部やってくれ」という両方の意味か、
分かりにくいですし、解釈が分かれてしまうので、相続人が混乱します。
また、実際の手続きの窓口でも、遺言書が使えなくなります。
たとえば、当然遺産をもらえると思っている相続人の太郎さんは、
「任せるとは遺産をあげるという意味でしょう」と言うでしょう。
しかし、他の人は単に、「遺産分割の手続きを任されただけで、分け方は話し合いによるべきだ」と主張するかもしれません。
ここでトラブルになる可能性があります。
もし、当事者の太郎さんと次郎さんの間で解決しない場合、裁判所に判断を仰ぐことにもなります。
また、太郎さんが実家を相続することで収まったとしても、この遺言書の書き方では相続登記できない可能性が高いのです。法務局の窓口で受理されないのです。
そうすると、遺産分割協議書を作らねばならず、遺言書の意味が無くなります。
「任せる」ではなく、「相続させる」と記載しましょう
②「俺の預金」とは、どの口座のこと?一郎さん名義の全部?
「俺の預金」といわれても、どれなのかわかりにくいのが問題です。
遺言書を書いた本人は、「俺名義なんだから、全部の口座なんだよ」というイメージかもしれません。
他にも、生活資金を出し入れしてよく使っている銀行・信金の口座のことをイメージしているかもしれません。
しかし、一緒に住んでいない場合はどの銀行なのかまずわかりませんし、混乱の元です。
また、多くの人は複数の金融機関の口座を持っているでしょう。ゆうちょ銀行(郵便局)、○○銀行、○○信金など、3つ4つ口座を持っていてもおかしくありません。
これでさらに、本人も忘れていた定期預金なんかがみつかったりすると、面倒です。
そうすると、①と同じですが、遺言の文章の解釈が割れて、もめる可能性が出てきます。
「年金口座の○○銀行だけ相続できるんじゃないの?」、
「あくまで解約手続きを任せてるんだから、配分は話し合いだろう」、
「『俺の預金』なんだから、三つあったら三つとも相続できるんじゃないのか」…。
相続人間で意見がまとまっていても、今回のようにあいまいで争いになりそうな可能性のある遺言書の場合、後々のトラブルを恐れて金融機関が本人名義の預金を解約してくれない可能性があります。
つまり、窓口ではじかれます。
こうなると、口座が凍結したままで、解約できません。
遺言書で、銀行名・支店名・口座種別・口座番号を指定しましょう
財産目録として、通帳のコピーを付けてもよいです
③日付は普通に書こう
友引や仏滅を避けて縁起のいい日に認めたいという気持ちもわかりますが、「大安吉日」だと何日なのか特定できません。
通常通りに「令和何年何月何日」と明記しましょう。
日付のせいで、遺言書全体が無効になる可能性もあります。
そうすると、名義変更等の具体的な手続きもできなくなります。
気取らずに、「令和何年何月何日」と書こう
④「万事くれぐれも頼む」とは?
この言葉自体を書くことは、問題ありません。
ただ、もう少し具体的に書かないと、読んだ人にうまく伝わりませんし、解釈が分かれてしまいます。
実家を子孫まで伝えてほしい、俺が亡き後も兄弟仲良くやってほしい、相続手続きを恙なくやってほしい…などなど、
万感の思いがあって、「くれぐれも頼む」という言葉だとは思います。
ですが、上記の具体的な思いをそのまま書いたほうがいいと思います。
きれいな文章でなくて多少たどたどしくても、素直に書いたほうが、読んだ人に伝わります。
また、「くれぐれも頼む」という言葉は本文ではなく、「付記事項」の部分で書いたほうがいいでしょう。
「付記事項」とは、遺言書の内容以外の事がらを書く部分です。
遺産の分け方の意図や相続人(ご家族)への思い、感謝の言葉やその他伝えておきたいこと(葬儀の意向等々)を書いておきます。
読み手に間違いなく伝わるように書こう。付記事項も使おう
まとめ:遺言書は効果があるように書こう
自身で書いた遺言書は、メモ用紙でもチラシの裏に書いたものでも、効果があります。
しかし、必要なことが書いていないと効果が出ません。(民法で要件が規定されています)
それどころか、中途半端な書き方や伝わりにくい文言だと、相続人間でトラブルを巻き起こしかねないので、むしろ逆効果になるかもしれません。
遺言書というのは、財産の権利を相続人へ渡したり、身分関係に関係するものであり、法律的な効果が発動するものですから、民法できっちり規定されているのです。
法律の規定に沿っていない曖昧な書き方をしてしまうと、無効になってしまいます。
実際の名義変更等の手続きの際に使えなくなりますし、遺言がなかったものとして遺産分割協議
をすることになり、遺言の内容と違う相続になってしまうことになるかもしれません。
そうすると、遺言を書いた人も思い通りにいかず、相続人も手間が増えたり揉めたりして心身ともに負担がのしかかり、みんな不幸になりかねません。
せっかく遺言書を作成するのであれば、想いが伝わってご家族の将来もうまくいくように、作成しなければなりません。
タイヨウ行政書士事務所では、遺言書作成サポートやチェックなどのご相談をお受けしています。
ご相談は初回無料です。
「何から始めればいいか分からない」、「こんなこと聞いていいのか」
そんなことでも、ちょっと聞いてみるだけでも構いません。
ご相談はいつでもお気軽にどうぞ。
