【遺言】相続や遺言書について誤解していませんか?~⑦遺言書は死ぬ間際に作ればいい

よくある「遺言書の誤解」10選

よくある「遺言書の誤解」10選について、今回は⑦を解説していきます。

  1. 法定相続分があるから揉めない
  2. 財産が少ないから遺言書は必要ない(遺言はお金持ち用だ)
  3. うちは仲がいいからもめないし、口頭で大丈夫だ
  4. 手紙のようなものでも遺言として通用する
  5. 遺言なんて作ったら家族の見る目が変わって仲が悪くならないか
  6. 財産を自由に使えなくなるんじゃないか
  7. 遺言書を作るのは、年を取ってからでいい、死ぬ間際でいい
  8. 財産を使い切ってから死ぬから遺言書なんていらない
  9. 主婦だったし遺言書なんて必要ない
  10. 専門家に頼むのは高そうで敷居が高い、財産の内容も知られたくない

チェックリストを見ていただいて、もし当てはまるものがあったら…
それは、誤解なんです。


「遺言書は、年を取ってから、死ぬ間際でいい」って本当に大丈夫?

そのお気持ちも、よくわかりますが…。

「遺言書なんて、もっと年を取ってからでいいよ。」
「今はまだ元気やし、そんな縁起でもないこと考えたくないわ。」

上記のようにお考えの方は、決して珍しくありません。

ある60代の男性は、こうおっしゃいました。
「遺言書って、いよいよ死ぬときに書くもんやと思ってました。今はまだ早いかなって…」

そのお気持ちも、よくわかります。
実際、誰しも≪自分はまだ大丈夫、そんな年齢じゃない≫と思いたいものです。
それに、「遺言書を書く=死を意識する」ように思えて、抵抗を感じるのも自然なことです。

ですが、私はこう言いたい。

「遺言書を作成するタイミングは、≪早すぎる≫ということはあっても、≪早すぎて困った≫ということは、まずありません。遺言書が無いことのほうが、困った事態になることが多いのです」

次の章では、その理由をお話ししていきます。


「遺言書は死ぬ間際でいい」は危険な理由

「遺言書は死ぬ間際でいい」という考えは、ご自身のためにもリスクがありますし、残されたご家族(相続人の方々)にも迷惑をかけてしまう可能性が大きいです。

「まだ元気だから大丈夫」、「そのうちやろう」と先延ばしにしてしまうと、いろいろな問題が起こります。

ここでは、相続が起こる前と後に分けて、その問題点やリスクを解説していきます。

相続が起こる前の問題点

  1. 病気や事故で判断能力を失うリスクがある
  2. 死期は誰にもわからない
  3. 作成するつもりだったのに、気力や体力が衰えてしまう
  4. 公正証書遺言を作成するには日数や段取りが必要

1. 病気や事故で判断能力を失うリスク

高齢になると、認知症や脳梗塞などの病気で、判断能力を失う可能性が高まります。
遺言書は、本人の「意思」が明確な状態でしか作成できません。
もし、病気によって意思表示ができなくない状態になってしまうと、遺言書を作成することができなくなります。

2. 死期は誰にもわからない

仏教で、「生老病死」という言葉があります。
人間が生まれてから死ぬまでの中では、避けることのできない4つの苦しみがあるということです。

たとえ、現在は健康であっても、交通事故などの突然のアクシデントで意識や生命を失うこともありえます。
また、心筋梗塞や脳卒中といった命を落とすような病気も年齢を重ねるほどにリスクが上がりますし、交通事故など突発的なアクシデントは、年齢に関係なく起こります。
急な入院や手術で身動きが取れなくなり、気づけばそのまま…ということも。
つまり、「遺言書を書こうと思っていたのに、書けない」という状況が起こり得るのです。

「遺言書を書くのはまだ早い」と思っていても、明日が無事に必ず来るとは限りません。
後悔しないためにも、できるうちに備えておくことが大切です。

3. 作成するつもりだったのに、気力や体力が衰えてしまう

病気や事故のほかにも、年齢を重ねると、思った以上に気力や体力が落ちてきます。

「そのうちやろう」と思っていたのに、億劫になってしまったり、手続きに出かける元気がなくなってしまったりする方も多いです。
遺言書は、体調や意欲がある時でなければ、きちんと向き合って作ることは難しいものです。

4. 公正証書遺言を作成するには日数や段取りが必要

もし、病気の悪化等で遺言書を書けない状況になっても、公正証書遺言を作成できる可能性はあります。
話したり、聞いたりしてしっかりと意思表示ができるのであれば、自分で書く力が残っていなくても、遺言書を作成できる方法です。

ただし、公証人の手配や相続人・内容の検討などの理由で、今日明日いきなり作成するのは難しい可能性もあります。
もし、危篤状態や意識朦朧とした状態だと、作成が間に合わなかった、というケースもあります。
また、入院中だと、財産状況を疎漏無く把握することが難しい可能性もありますので、できれば健康なうちに作成しておきたいところです。

相続が発生した後のリスク

  1. 家族が準備不足でトラブルになりやすい
  2. 「うちの親は、ちゃんと準備してくれてる」と信じていた家族が困惑する
  3. 元々の希望と違う形で財産が分配されてしまう
  4. 残された家族(相続人)が揉めて、関係性が悪化する可能性
  5. 亡くなった方と相続人の思い出に、傷を残す可能性
  6. 相続税の申告期限(10か月)までに手続きが間に合わないことがある

1. 家族が準備不足でトラブルになりやすい

人が亡くなって、相続が発生すると、思った以上に多くの手続きや判断が求められます。

相続人の確定、遺産の調査、遺産分割協議(相続人全員での話し合い)、不動産や口座、自動車の名義変更など…。
他にも、葬儀の手配や各所への連絡、年金関係や保険等の手続き等々、細かいものまで含めると、数十~100種類にもなることがあります。

全く何も準備がないまま慌てて対応しようとすると、手続きが滞るだけでなく、家族間で意見が対立し、関係性が悪化することもあります。

たとえ財産が少なくても、「うちは大丈夫」と思い込まず、事前に最低限の情報整理や方針共有をしておくことが、家族を守る第一歩です。

2. 「うちの親は、ちゃんと準備してくれてる」と信じていた家族が困惑する

もしも、「相続のことはちゃんと考えてるよ」と言っていたとしても、実際に遺言書が見つからなかったり、内容が不完全だったりすると、残された家族は大きな混乱に直面します。
「ちゃんと遺言書を準備してくれていると思ってたのに、何も無かった…」というギャップは、信頼や期待を裏切る結果となり、心情的にも大きなショックです。
準備をしていないこと自体より、「準備していると信じていたのに…」という落胆が、家族の心に深く残ってしまうのです。

3. 元々の希望と違う形で財産が分配されてしまう

「自分が亡くなったら、この家は長男に相続してもらおう」、「この預金は次女に渡そう」など、頭の中ではしっかり決まっていても、遺言書がなければその想いは法的に実現されません。
遺言書がない場合、遺産分割協議(相続人間での話し合い)をするのですが、その時に法定相続のルールに従って分配されると、亡くなった方の希望とは異なる結果になることも。

特に不動産は分け方が難しく、トラブルの原因になりやすい部分です。
もし希望があるなら、必ず遺言書という「形」にして残しておくことが大切です。
「実家は長男に引き継いでほしかったのに、処分されてしまった」など、残念な結果にならないように、準備しておきましょう。

4. 残された家族(相続人)が揉めて、関係性が悪化する可能性

「うちは仲がいいから大丈夫」、「財産も少ないし、うまくやってくれるだろう」と思っていても、相続をきっかけに関係が悪化するケースは少なくありません。
遺産の分け方や想いのズレが、思わぬ誤解や不信感を生むことも珍しくないのです。

同じ家で育った子どもたちであっても、大人になっていろいろな経験や異なる環境を経ていく中で、「そんなことを言う人だったのか」、「もうすこし事情をわかってくれてもいいじゃないか」など、兄弟間ですれ違いやわだかまりが生まれてしまうかもしれません。
話し合いの場では、感情が絡みやすく、冷静な判断が難しくなることもしばしば起こります。

たとえ遺産が、数万円~数十万円等の少額であっても、感情の問題になってしまうと尾を引いてしまいます。

5. 本人が亡くなった後、相続人同士の関係が悪化する可能性

相続争いは、分け方そのものよりも「気持ち」の問題でこじれることが多いです。
「親の介護を私が全部したのに…」、「何もしてこなかった弟が同じ額?」といった不満や、子どもの頃からの積もった感情が爆発してしまうことも。

相続後の話し合いで関係が決裂し、絶縁状態になる兄弟姉妹も実際にいます。
親としては、家族の絆を守りたいはず。遺言書によって、そうした関係悪化のリスクを減らすことができます。

6. 亡くなった方と相続人の思い出に、傷を残す可能性

相続でもめると、残された人の心に「争った思い出」が残ってしまいます。
悲しみの中で始まった相続手続きが、いつの間にか憎しみや不信に変わることも。

「お父さんが遺言書を残してくれていたら、こんな苦労はしなくて済んだのに…」と悔やまれることもあります。
故人の優しい記憶や家族の絆が、争いの末に壊れてしまうのは本当に悲しいことです。

7. 相続税の申告期限(10か月)までに手続きが間に合わないことがある

相続税の申告と納付には、相続が発生してから10か月以内という期限があります。
期限内に、相続人を確定し、財産を調査し、分割の協議を終え、税金の申告書を提出しなければなりません。
しかし、遺言書がなかったり、遺産分割協議がまとまらないようなことが起こると、この期限内にすべてを終えるのは非常に困難になります。

10か月以内という期限に遅れると、延滞税や加算税が課せられることもあり、余計な負担となります。


余裕があるうちに遺言書を準備しておいた方がいい

さまざまな問題点を挙げましたが、結論としては一つです。
いざという時に、遺言書が無くて困ることが非常に多いのです。
ご本人もそうですし、相続されるご家族が困るのです。

もし、遺言書があれば、遺産分割協議(相続人間での話し合い)をしなくて済みますし、揉め事の防止に大きく貢献します。
他にも下記のようなメリットがあります。

  • 自分の意思でしっかり相続させる内容を決められる
  • 家族に迷惑をかけずに済む(スムーズに相続手続きが進む)
  • 特定の人に配慮した内容を書ける(介護をしてくれた子など)
  • トラブルの芽を事前に抑えることができる
  • 心の準備ができているからこそ、冷静に判断できる
  • 付言事項(家族への想いなどの追記)も書き添えられる
  • 後から書き直すこともできる(早めに作っても不都合なし)
  • 終活の第一歩として気持ちが軽くなる
  • 「自分の人生のまとめ」をするよい機会になる



相続に関する手続きは、財産や家族の関係性などでトラブルになってしまうリスクが、どうしても高くなります。
確かに、自分の財産と相続人のことを考えて、しっかりとした遺言書を作成するというのは、多少の手間はかかります。

ですが、あらかじめ元気なうちに、できれば今日からでも、しっかりと計画して遺言書を作成しておいた方が間違いないです。
たとえば、死ぬ間際に遺言書を作成しようと思っていたとしても、体調に不安を抱えた状況では、冷静に納得いく文言を考えるのは難しいものです。
また、急病やアクシデントに見舞われてしまうと、遺言書自体が作成できなくなる可能性もあります。

遺言書が無いと、ご本人も、残されたご家族(相続人)にとっても、いらぬ苦労をする羽目になったり、不幸になってしまう可能性が高くなってしまいます。


タイヨウ行政書士事務所では、遺言書作成サポートやチェックなどのご相談をお受けしています。
ご相談は初回無料です。

「何から始めればいいか分からない」、「こんなこと聞いていいのか」
そんなことでも、ちょっと聞いてみるだけでも構いません。

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